2023年1月6日(金) US進学総研
昨年12月20日、厚生労働省は、2021年10月の人口動態統計速報を発表。昨年1~10月までの出生数は669,871人で、前年から4.8%減少。この傾向が続けば、過去最少だった2021年の811,622人を下回り、初めて800,000人を割り込む公算が大きくなりました。
大学進学者を2022年度と同じにしようとすると、大学進学率は80%近く必要に
2023年度入試対象の18歳人口は、1,097,416人。「年度」と「年」で、カウントする時期が多少異なるものの、18年後にあたる2041年度入試対象の18歳人口はおよそ800,000人になることになります。2023年度入試から考えると27.1%減です。大学進学者を2022年度と同じ635,156人でキープしようとした場合、大学進学率は80%近く必要になります。
予測はしていたものの、ここまで極端に人口減少が加速してくると驚きますし、一昨日、岸田首相が「異次元の」と表現して少子化対策を発表したのも理解できます。先行指標である婚姻件数が伸びていなかったことを考えれば、2023年も、さらに減少する可能性もありますので、少子化対策の効果が出てほしいところです。
世界的に見て進学率が低い大学院進学者を増やす方法もある
大学から考えれば、18歳の受験者が増えない場合、定員確保のために、社会人や留学生の受験者を増やしていくことも考えていくことになります。また、世界で見ても進学率が低いと言われる大学院進学を増やすことで、大学経営を安定させるという方法もあります。
学士課程修了者の大学院進学率は、20年間伸びていない
学士課程修了者の大学院進学率は、昨年末発表された2022年度 学校基本調査で11.0%となっており、ここ数年は若干伸びているものの、20年間の推移で見れば伸びていないことが分かります。特に、女子は6.4%と男子の15.1%よりかなり低い進学率になっています。芝浦工業大学では、2023年度に、女子学生の大学院進学を後押しするため、大学院修士課程の奨学金制度において学科成績女子1位の女子学生(合計16人)へ、最大60万を給付する「女子枠」を設置すると発表。このような取組みもあり、今後は女子先行で大学院進学が増えていく可能性が出てきています。
大学院入学者の社会人比率も伸びていない。リスキリング強化で変化が起きるか
昨年10月3日、岸田首相から、第210回国会での所信表明演説において、「個人のリスキリング(学び直し)に対する公的支援、五年間で一兆円」と発言がありました。社会人のリカレント教育支援については、かなり前から予算を付けていたかと思いますが、今までもあまり成果は出ていませんでした。大学院修士課程入学者における社会人比率は、10%程度で変化がありません。ただ今回は、リカレントではなく、リスキリングという言葉を使っており、その点は大きな変化だと感じます。デジタルやグリーンなどの成長分野に移動するための学び直しへの支援策の整備や、年功制の職能給から、日本に合った職務給への移行など、企業間、産業間での労働移動円滑化に向けた指針を、今年6月までに取りまとめるとのこと。
昭和女子大学のような1年制専門職大学院の動きも。特に文理融合系での大学院進学が増えるかどうかが鍵になりそう
これらのことから、確定している18歳人口減少に備えて、大学院でも新しい取り組みを考えていくことができると思います。人文社会科学系分野等に数理・データサイエンス・AI分野の要素を含む学位プログラム等を設定する動き(デジタルと掛けるダブルメジャー大学院教育構築事業~Xプログラム~)や、2023年4月新設予定の昭和女子大学専門職大学院(福祉社会・経営研究科 福祉共創マネジメント専攻)のような1年制専門職大学院の動きが出てきています。学士修了者の大学院進学を後押しするとともに、社会人の大学院進学者も増やすことができれば、大学にとっても日本社会にとってもいい方向に向かうのではないでしょうか。