US進学総合研究所

駅の再開発と地方自治体の大学誘致


2024年1月26日(金)US進学総研

 地方都市は生き残りをかけて、都市再生のため様々な対策を行っています。そのうちの、駅前の再開発や新駅建設は、大きな起爆剤となるため、これをきっかけとして大学誘致を行う自治体も多く出ています。大学誘致が成功すれば、多くの学生が通うことになり、まちが活性化することになります。ただし、それは大学の学生募集がうまくいく前提のため、募集に苦しんでいる大学を誘致すれば、両者ともに苦しい状況に追い込まれます。

 地方都市でなくとも、大学誘致は多くあります。大阪府にある茨木市が、サッポロビール跡地に立命館大学を誘致したように、この20年間で見ると、特に京都と大阪の間で多くキャンパスが新設されています。地方都市でも首都圏・関西圏の都市でも、大学誘致により、まちを活性化したいというのは同じです。ここでは、大学誘致をして、今後キャンパス移転が計画されている3つの都市を紹介し、大学誘致について考えてみたいと思います。

2025年4月、香川県さぬき市にある『徳島文理大学』香川キャンパスは、JR予讃線・高徳線「高松駅」横に全面移転

 徳島文理大学は、徳島市内の他、香川県さぬき市にも1983年以来、キャンパスを設置しています。このうち香川県さぬき市にある香川キャンパスをJR「高松駅」横に、地上18階建て地下1階の学部棟と地上8階建てのホール棟を建設して、2025年4月に全面移転する計画となっています。移転対象は、香川薬学部、文学部、理工学部、保健福祉学部(臨床放射線学科、臨床工学科)の4学部。香川県さぬき市のキャンパスの跡地利用についてはまだ発表がありません。私鉄や地下鉄の駅徒歩圏内へのキャンパス移転はよく見られるが、JRの大きな駅の横にキャンパス移転する例はほとんど見られないため、かなり大きな移転だと言える。(写真:JR「高松駅」前)

2027年4月 群馬県みどり市にある『桐生大学』は、東武伊勢崎線「太田駅」南口にキャンパス新設

 大学への通学は、群馬県桐生市にある「桐生駅」南口よりスクールバス25分となっているが、大学は、みどり市にある。その桐生大学が、2027年4月に東部伊勢崎線「太田駅」南口にキャンパスを新設する。このキャンパスは「太田駅」に直結しており、東毛地域(桐生市・太田市・館林市を中心に構成される群馬県南東部)からのアクセスがあがることになります。
新たな学びの拠点としていますが、新設学部などの情報はありません。そのまま移転することも考えられます。(写真:東武線「太田駅」前)

2028年4月 北海道石狩郡当別町にある『北海道医療大学』は、JR千歳線「北海道ボールパーク(仮称)」新駅前にキャンパス移転

 JR学園都市線「北海道医療大学駅」の駅前にある『北海道医療大学』は、日本ハムファイターズの球場であるエスコンフィールドHOKKAIDOを含む、北海道ボールパークFビレッジ(北広島市)内へ、2028年4月にキャンパス移転が決まっています。同時に、JR千歳線には、新駅として「北海道ボールパーク(仮称)」が新設され、大学は駅前キャンパスとなります。当別町にある大学跡地の利用については、まだ発表がありません。2025年4月入学者は、4年生から新キャンパスで学ぶ可能性もあり、学生募集にも影響があると予測されます。(写真:エスコンフィールドHOKKAIDO)

岐阜県・三重県・長野県・兵庫県でも大学誘致の動きあり。長期に渡り成り立つかどうか充分な検討が必要。

 岐阜県岐阜市は、JR「岐阜駅」前に建設予定のツインタワーに大学誘致するという報道が出ています。岐阜市には、岐阜薬科大学と市立短大はありますが、どの大学を誘致するというところまでは発表されていません。また、三重県四日市市には、JR「四日市駅前」に公立大学を新設する構想もあるようです。三重県として県立大学を四日市市に誘致する動きもありましたが、県が断念したことを受けて、方針を切り替えています。長野県飯田市では、2027年以降にリニアの駅ができることもあり、大学誘致を行う話が残っています。信州大学を誘致したかったようですが、新学部の設置ではなく大学院の拡充を発表しましたので、信州大学はもうありませんが、様々な検討はしているようです。
 

 地方都市ではありませんが、神戸市も大学誘致に乗り出しています。阪急神戸線「王子公園駅」に関西学院大学を誘致するという方針が出ており、2023年12月に神戸市と関西学院大学は基本協定を結んでいます。このあとも、大学新設や大学全面移転のような大きな話から、サテライトキャンパス新設のような小さな話まで、さまざまな大学誘致の話が出てくると思います。1990年代も、同じような大学誘致合戦が行われた時期があり、海外の大学まで誘致した例もありました。冷静になって、人口減少トレンドや今後の企業誘致などもあわせて読み込んでしっかり計算していく必要があることは間違いありません。

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